home おこづかい稼ぎ日記っぽい 転売ヤーって何よ?

転売ヤーって何よ?

前の記事で述べた通り、転売ヤーという言葉そのものに否定派も肯定派も翻弄されている気がします。

辞書の定義において転売とは『買った物を、さらに他に売り渡すこと』です。
そこに社会的役割や道義的責任などは言及されていませんし、暴利をむさぼったり人の足下を見て商売をするかどうかも関係ありません。

つまり辞書的な定義においては商社も貿易会社も小売店も転売ヤーもみんな転売をしているということです。この点について肯定派の主張は間違っていないでしょう。

ただ、ここで問題となるのが辞書的な意味ではなく社会通念上、道徳上の話になります。

商社、貿易会社、小売店などはその商業活動を通じて社会に貢献しています。
商社はその活動を通じ多種多様の商品を世に出すという役割を担い、貿易会社は日本国内で不足している食料や原材料を輸入し加工製品を輸出するという役割を、小売店は我々消費者が容易に買い物のできる環境を整えてくれています。

特に貿易会社や小売店は我々の生活になくてはならない存在です。(商社に関しては日本特有のものであり、海外では見られない業態らしいので絶対に必要とまでは言いません。もし絶対に必要だというなら日本以外の国は経済活動が崩壊していないとおかしいので)

一方転売ヤーは何ひとつ社会貢献をしません。
貿易会社や小売店と違い、居なくても何の問題もない存在です。
「むしろ害悪」という否定派の主張通り、益よりも害の方が大きいでしょう。転売ヤーが今この瞬間居なくなったとしても、生活に困る人間はほとんど居ません。

このように辞書的な意味では同じ転売ですが、社会的な認識では全く異なる存在です。

肯定派の人たちは辞書的な意味を主張し、否定派の人たちは社会的認識をもって主張する。
そりゃいつまでたっても相容れないのは当然です。

ネット上で検索してみると、辞書的な定義以外にも転売の意味を記述したサイトがたくさん見つかります。

例えば

「小売業者から商品を購入し、それらを販売する行為」

「転売とは売却差額益を目的に、消費者として購入した商品を高額で他者へ販売する行為」

などです。

これらの定義はおそらく多くの人が納得できるものではないでしょうか。

ただ、上記は辞書的に見ると間違っている定義です。辞書の定義には『小売業者から』などという入手ルートの指定はありませんし、『消費者として購入』といった購入者の立場に関する言葉もありません。

また、ウィキペディアには転売ヤーの項目はありませんが、かわりに転売屋の項目を見ると

転売屋

主に数量が限定されるなどの入手困難な商品を転売目的で購入(個人ないしアルバイト等で雇われた複数人)し、インターネットオークション等のインターネットを介し高値で販売することを生業・趣味とした一般個人を指す。

wikipediaより

とあります。

これも辞書的な意味ではなく社会的な認識をもとにした定義と言えるでしょう。

例に挙げた定義は人々が心理的に受け入れられる、実情に即した定義と言えます。
一方で辞書の定義とは違いますし、当然法律で定められた定義でもありませんので、あくまでも社会一般的にみんながそう感じているに過ぎません。

結局のところ肯定派に噛みつく否定派も、否定派に噛みつく肯定派も、互いに転売という言葉の定義が食い違っていることを無視して不毛な言い争いをしているのではないかと。

否定派にとっての転売……社会的な認識の転売

肯定派にとっての転売……辞書的な意味の転売

そこから生じて、転売ヤー転売をする者を同一視している人が多いのだと思います。

いわゆる転売ヤーという言葉には、自らの利益を優先して他者への迷惑を顧みず不道徳な転売を行う者。という意味が含まれます。単純に言うと悪質な転売ということです。

当然これには社会的な役割を持ち人々の生活に役立っている商社や貿易会社、小売店は含まれません。
しかし転売という用語をそこへ使ってしまったせいで、まっとうな転売者(事業者)との線引きがあいまいになってしまったことが問題ではないかと思います。

転売ヤー ≠ 転売者(転売業者)

転売ヤーと転売者は別の存在です。

大きなくくりで言えば転売して利益を得る者という意味で同じですが、同一視すべきものではありません。

図にするとこんな感じでしょうか?

おそらくこの違いが否定派と肯定派の不毛な論争の原因じゃないかと。
転売擁護派についてはまた別の話なので、否定派と擁護派の戦いは終わらないでしょうけど。

結論としては転売ヤーという言葉が悪い。と私は思っています。

転売という言葉を使わずに『自らの利益を優先して他者への迷惑を顧みず不道徳な転売を行う者』を定義する言葉があれば良いのですけどね。

人の足下を見て暴利をむさぼるから『フットルッカー』とか、希少な商品を買い占めるから『買占屋』とか。

『転売ヤー』と最初に名付けた人はそこまで考えていなかったんでしょうが、転売という用語を入れてしまったことで言葉がひとり歩きし、無意味な諍いを生んでしまっているような気がします。

同じようなケースに『ハッカー』がありますよね。
ハッカー自体はもともと優れたコンピューター技術を持つ人物を表す言葉ですが、悪意をもって他人のコンピューターを利用したり損害を与えたりする人物(クラッカーやアタッカー)のことをメディアがハッカーと紹介し続けたため、本来の意味が歪められて認知されるようになりました。

転売についても同様です。
本来は正常な商取引行為を表す転売という言葉が、転売ヤーという悪質な転売者を表す言葉として誤った認知をされるようになっているのだと思います。